右臀部の鍼治療で、左手首の腫れが軽快した1症例
熊本市で東洋医学専門の鍼灸治療を行う当院では、内科的な不調や自律神経の乱れなど、原因がはっきりしない症状にも対応しています。 このページでは、実際に来院された方の症例と、その診察・施術の流れをご紹介しています。同じようなお悩みをお持ちの方の参考になれば幸いです。
初診日:X年10月3日

患者さん情報
60代女性 営業職を行っている。
服用中のお薬
ロキソニン・冷湿布・高脂血症とアレルギーの薬(薬名不明)
お悩みの症状
左手首の腫れ・痛み
右肩前面の痛み
左手首の腫れ・痛み
左手首背面に、少しの腫れがあり、背屈動作でズキズキした痛みが出る。
2日間痛み止めと冷湿布をしていたため、2日前はドアも開けれないほど痛みがあった。最初の痛みが10とすると、現在は4程度が続いている。
右肩前面の痛み
痛みで目覚めることがあり、ずっと同じ姿勢で座っていたり、寝ていたりすると、患部が固まるような感じで痛む。動いている時は比較的に症状は軽いが、安静時に激痛が10とすると、6ほどの痛みがある。

既往歴〜現病歴
幼少期
大きな病気はなく、外で活発に遊ぶ子どもだった。
学生時代
ソフトボールやバレーボール部に所属し、練習にも問題なくついていけていた。小学生時代から環境の変化で便秘になっていた。
また、食欲はあるが食事の好き嫌いが激しく、肉・魚を食べず野菜だけを食べる子供で、周りに比べてかなり痩せている体型だった。たまに立ちくらみが起きていた。
20代
職種は省略するが、厳しい職務環境で働いていた。、体力も問題なかった。
食べ物の好き嫌いは強制的に改善され、肉・魚も普通に食べるようになる。
20代後半
27歳で結婚。28歳で出産。
あまり寝てくれない子供で、育児に負担を感じていた。
右手が腱鞘炎になり、1ヶ月間整体に行っても治らず、たまたま行った鍼灸院で3日間で治り、鍼灸の面白さを知った。
30代
30歳、32歳で出産。産後から月経痛がきつくなり、出血量が増え、月経前に頭痛酷く、吐くこともあった。
35歳、鍼灸内膜症と診断される。
37歳、出産。
38歳、子宮筋腫が見つかる。月経痛は、月経前〜2日目まできつく、痛み止めを服用。出血量が多く、血塊あり。
40代
40歳で現職に就く。
育児と仕事だけでなく、義母の介護もあり、とても忙しい日々を送っていた頃、急に耳が聞こえなくなり、病院でメニエール病と診断される。半年間の西洋医学的処置で軽快する。
50歳
主訴②右肩痛発症。五十肩と診断され、ブロック注射をしていた。
50代後半
朝に手のこわばりを自覚するようになる。
58歳、急性胆嚢炎になる。健康診断で高脂血症もみつかり、以降半年に一回経過観察。
60代
主訴①発症:左手首の腫れ・痛み
6程度の痛みを3年間キープしていた。
高脂血症の数値が落ちず、投薬を開始。
また、人間ドッグで逆流性食道炎の傾向があると言われ、これ以降胃もたれを感じるようになる。朝の手のこわばりがあることも伝え、リウマチ検査を行ったが、異常なし。
現在に至る。
その他の症状
首・肩・背中がこる
手首・足首が痛い
腰が痛い
アレルギーがある
体重増加がある
患者さんの体表観察情報

顔面気色診
神:栄
形:肥〜中
色:心白・肝青黒沈 腎青
腠理:密 膏沢:有り

背候診
左心兪虚中実・右心兪実、右膈兪実・左肝兪虚中実・左胆兪虚中実・左胃兪実

舌診
舌色:淡紅舌
舌苔:白薄苔
舌腹:紅色
舌尖紅刺 胖嫩

腹診
以下に硬い邪あり
心下・脾募・胃土・右肝相火
臍の左上緊張感あり

脈診
一息三至半 左寸口に弦急脈
脈幅+
脈力+
重按 右ー、左+
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経穴診
右内関実・右後渓虚中実・右霊道虚・左三陰交実・その他左上半身のツボに反応あり
東洋医学的な診断名
腎虚≧肝気上逆〜心肝気鬱 空間左上の気の偏在
治療経過
<1診目>
右膀胱兪・・5番鍼で20分置き針
脈診をする際に、手首を抑えると、激痛がしていたが、鍼を抜いた直後の脈診では痛みがなくなっている。

<2診目>1週間後来院
前回の初診後から、左手首の痛みが1以下になり、日にちがたつごとにどんどん楽になり、腫れもなくなっていった。
右肩前面の痛みも6-7→2くらいにまで寛解した。
同じツボ・・5番鍼で25分置き針
この患者さんは劇的な変化に大変喜ばれ、その後ご友人や職場の方もご紹介くださいました。
また、ご本人の近況を別の方からうかがったところ、以前よりもとても調子が良いとのことで、私も安心いたしました。
<まとめ>
手首や肩の痛みは鍼灸院では日常的に多くみられる疾患であり、今回症例としてまとめるべきか迷いました。しかし、患部である左手首や右肩ではなく、遠く離れた右臀部のツボに鍼をしたことで著効が得られたため、ツボ治療の面白さを知っていただきたいと思い、まとめることにしました。
当院では、「痛いから痛い場所に刺す」という施術は行いません。北辰会方式を基盤とした中医学的な弁証論治に基づき、気血の流れやツボの関係性を総合的に判断し、必要な一本を選びます。
今回の症例は、その理論がそのまま臨床結果として現れた一例といえます。患部に触れずとも体全体のバランスが整えば痛みが変化するという、東洋医学的治療の奥深さを感じていただければ幸いです。











